「おおかみこどもの雨と雪」感想
「おおかみこどもの雨と雪」をチラリと見た。(家事をしながら、下の子を負ぶいながらの中途半端な鑑賞になってしまったけれど)
以前、地上波初放送の時に見ているので、特別新しい発見はなかった。
当時抱いた違和感を、思わずネットで検索してしまったことを思い出した。あえて批判的なものを拾い読みしたせいか、今回も物語の筋やその運び方に引っかかりを覚えてしまい、素直に感動できなかった自分がいた。
もちろん、その素晴らしい映像美にはとても強く惹かれるものがあった。
子育てについての一つの考え方、あり方についても、とてもよく考えさせられた。子供主体の子育ての素晴らしさ、難しさが、良くも悪くもきれいに収まりよく描かれていたように思う。
けれども、一人の母親として見てしまうと、得も言われぬ違和感をぬぐいきることができなかった。
主人公の女性(花)が自宅出産を選ぶシーンから、10代20代の望まない妊娠をした女性が病院や助産院を頼らず出産し、残念な結果に終わってしまうニュースを連想してしまったこと。
困難な状況での、だれにも頼らない育児が、想像以上にさらりと、他人事のように描かれていた印象を抱いたこと。
一歩間違えば、虐待スレスレの子育てであったこと。(病院にかかれない、周囲に相談できないなど。事情が事情であるが故、仕方のないこととはいえ)
主人公の女性が、ことさら強く・賢く・美しく描かれすぎていて、ご都合主義に感じてしまったこと。
花のスーパーマザーぶりが、ひどく絵空事めいていて、感情移入できなかったこと。
もっとも、フィクションの世界に、現実社会の倫理観やリアリティなどを持ち込むこと自体が滑稽な行為なのだろうけれども。
大きな不安を抱えながらの妊娠・出産を経て、悩み躓きながらの育児を今現在も経験している真っ最中の自分としては、それらの過程が必要以上に美化されていたり、逆にないがしろにされいたりしたのが、面白くなかったのかもしれない。
けれども一方で私自身は、
花がなぜ避妊をしなかったのか。
おおかみおとこが、自分の人生に行きづらさを感じていたのに、なぜ子孫を残したのか。
などの疑問は、感じなかった。若くして妊娠・出産を経験する女性のなかには、自分の不幸な生い立ちを理由に、だからこそ温かい家庭に憧れるのだと聞いたことがある。
これらの花とおおかみおとこの思考と行動は、それに似た感覚なのではないのだろうか。