他人の物を、本人の許可なく勝手に捨てる人
私の身近に、「他人の物を許可なく勝手に捨てる人」がいる。
私の叔母(父の姉)に当たる人だ。
被害者は私ではなく、私の両親だ。
私の両親は物への執着、思い入れがない。
また、被害にあった捨てられたものが、明らかな不用品(賞味期限の切れた食料品や、ボロボロになったタオルなどなど)であったり、買い替えがきく安価な日用品だっため、今のところ幸か不幸か大きなトラブルもない。
叔母が、両親の私物を捨てるのには理由がある。
遠方に住む叔母は、数年前から年に一回、一週間から10日ほど実家に長期滞在してしている。両親が旅行の際、両親と同居している叔母にとって母であり、私にとっての祖母の身の回りの世話と家事をするためだ。
叔母は、長期滞在するにあたり、生活空間をある程度自分にとって快適に整えることは「当然の権利である」だと思っている。
一方、両親もまた、祖母の世話をお願いするにあたり、叔母が家の中を色々といじることは「ある程度仕方のないこと」だと思っている。
もっとも、両親は、叔母のこの行為を、広い心をもって許容しているわけではない。ただ、トラブル回避のため、あえて目を瞑っている状態だ。
叔母にとって、痴呆の進んだ祖母の私物と言う名の粗大ごみの処分の延長に、両親の私物の処分がある。
頼まれた家事の一環であり、感謝されこそすれ、非難される筋合いなど微塵もないと思っているはずだ。
叔母は、専業主婦である自分の家事能力に絶対的な自信を持っている。
無駄なものを処分し、適切な場所に整理して美しく収納する行為は、絶対的な善だと思っている。
この思い込みは、主婦としての、妻としての、母親としてのプライドからできているらしい。
先日、こんなエントリーを読んだ。
事情は異なるが、ネットではしばしば「夫の私物(大抵は趣味のコレクション)を妻が勝手に処分して、夫が大激怒する(最悪離婚話になる)」エピソードを目にする。
多くの場合、コメント欄は、夫の私物を勝手に処分する妻への批判と、夫への同情の声であふれている。妻に共感する声は皆無だ。
私自身、全面的に妻に共感はしない。けれども、身近に「他人の物を、本人の許可なく勝手に捨てる人」がいるせいか、多少なりともその行動心理が「わからなくはないかな」とも思う。
妻として、母親として、主婦として。
「家の中がきれいに片付いていること」
「家の中に不要なものがないこと」
「家の中で必要なものが適切な場所に美しく収納されていること」
は、よりプラスに評価される。
ゆえに、家庭において当人(夫であったり、子供であったり)が私物を適切に管理しきれていないと判断した場合、妻であり、母親であり、主婦である自分が、責任をもって管理・収納・処分するのは妥当だと考える女性が一定数いるのも、致し方ないのではないか、と個人的には思えてならない。
少なくとも、対子供に限って言えば、子供の私物(おもちゃや洋服など)を母親が独断で処分するのを良しとする人間は少なくないはずだ。
穴の開いた服、サイズアウトした服、見向きもされない落書きだらけの安物のおもちゃ、大量の折り紙。びりびりに破かれ原型を失った絵本。などなど、子供に内緒でこっそり捨てているママ友は多い。
対大人に対してもそうだ。
ママ友との会話の中で「夫の私物が邪魔だったら、使ってなさそうな埃まみれのものからこっそり捨てていけばいいのよ。私はそうしているわ」とアドバイスされているのを聞いたことがある。
どこまで本気かわからないが、多少気持ちはわからなくはないな、とも思う自分もいる。
スペースには限りがある。
家が散らかっていて、恥をかくのは自分だ。
親、義理の両親から、指摘を受け片付けをうなされるのも自分だ。
けれども夫は、どんなに声掛けをしても、お願いをしても積極的に私物を整理・収納・管理しようとしない。
「だったらこっそり自分が捨てるしかない」は、間違ってはいるが、致し方ないのかな、と思えなくはない。
余談
件のエントリーに関して、興味深い考察を見つけた。
家事・育児をしていると、「人(主に夫と子供)との境界線の引き方の難しさ」を時折考えさせられる。
自己責任と突き放してしまった結果、めぐりにめぐって自分に火の粉が降りかかる可能性も決してゼロではないのだから。