「一夜の過ち」と酒に酔った勢いのセックスを肯定する人々。
伊藤詩織さんの事件について。
一般論として、
「自分の意思で酒を飲み、結果意識を失い酩酊した女性」が自分の意思に反して異性と性行為に至った場合、この女性は性被害に遭ったとは言わない。
少なくとも、相手の男性は「レイプした」とは考えない。
当の女性も、「失敗した」とは思っても「レイプされた」とは思わない、だろう。
あくまで「自己責任」であり、「事故」であり、「ハプニング」であり、「恥ずかしい失敗」なのだ。
そもそも、この認識自体が間違っているのでは、と個人的には思っている。
なぜなら、酒に酔っていたのであれば、例え意識があったとしても、正しい判断ができているとは限らないからだ。
飲酒して車の運転をしたら、即アウトだ。
どんなに
「自分は酔っていない。」
「自分は酒に強い。」
「自分の意識ははっきりしていた。」
と主張したところで、法律的には一発アウトなのだ。
けれども、不思議なことに性行為に関しては、そうはいかない。
酔っていても、事後行為自体を後悔していても、「性暴力」とはみなされない。
いや、時と場合により、みなされる場合もある。しかし、みなされるには、非常に沢山のエネルギーと時間と労力を要する。
それが現実だ。
少なくとも物語の世界では酒に酔った勢いのセックスは「一夜の過ち」ぐらいの軽い扱いだった。
ドラマや映画では「恋愛ドラマのとっかかりとして」「エピソードの一つとして」割とよくあるシーンではある。
- 朝起きたら、自分は裸でベットに寝ていて、隣に同じく裸の見知らぬ異性が寝ている。
- 昨晩の記憶が全くなく、パニックになる主人公。
- 記憶がないのに(ないから??)、自分が性暴力を振るったのかも(振るわれたのかも)とは、微塵も疑わない主人公。
- この「一夜の過ち」を、たんなるハプニングとしか認識しない、主人公とその相手。
のような描写も、よくあるパターンだ。
もっとも、ドラマや映画の中の世界だ。
主人公も相手も「美男美女」だし、結果娠もしなければ、暴力も伴わない。性感染症にもならない。最後まで気持ちよく酔ったままで終わるのも多い。
おまけに、相手といい関係になって、恋愛にまで発展したりもする。
下手したら「一夜の過ち」ではなく、単なる恋の始まりとしてでしか描かれなかったりもする。
もしかしたら、我々の中にあるこの「一夜の過ち」に対する「ふんわりした」認識自体が、この事件を面倒くさくしているのかもしれない。